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温泉地で発生する地すべりとして温泉地すべりがあることは知られているが、温度は低いが水質からみて温泉と定義できる地下水が湧出する地すべり地がある。長野市郊外の裾花川沿いの七久保地すべりでは、水質の異なる2種類の水が湧出している。この地すべり地の同じ地点でボ-リング孔の深さを変え、ストレ-ナ-の深度を変えて水頭を観測している。この深さの異なる2本のボ-リング孔の水を採水して調べた結果は、表-1の通りである。そのヘキサダイヤグラムを図-1に示す。
15-2は、ストレ-ナ-の深度21~24mの水で
に富む硫酸ナトリウム型の水である。その水頭は地表面下9mにある。また15-3は、ストレ-ナ-深度29~33mの水で、
に富む食塩型の水である。そしてその水頭は地表面下14mである。この2種類の水は、いずれもそのイオン濃度が高い。通常の試験結果では、図-1のヘキサダイアグラムの横軸のスケ-ルは、5meq/L程度であるが、ここではmeq/Lとしており、通常の地すべり地の地下水のイオン濃度の20倍以上である。表-1の数値でも、この2種類の水はいずれも1,000meq/L以上のイオンが含まれており、定義上温泉水といえる。
同じ地点において、深さを変えて2種類の地下水が存在することをどう説明するかという問題が残る。深いところにある食塩型の水は、単純に地下から湧出していると考える。一方、硫酸ナトリウム型の水は、近くに存在する安山岩の貫入岩体の中を上昇し、浅層地下水の供給源となって流下していると考える。両者の水頭の違いにも合致している。地すべり地内で調べた水は、大部分が硫酸ナトリウム型の水であり、地表水で希釈されたものとみることができる。
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表-1 地下水の化学成分分析
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図-1 水質分析結果のヘキサダイヤグラム
地盤中の地下水がどこから由来するものかを知るためには、その水質の調査が役立つことが多い。もっとも簡単な調査では、水温、pH、電気伝導度を測定している。さらに詳細には化学成分分析を実施している。化学成分としては
を計測している。特殊な水質の地下水による地すべりの例としては、松代地震の際の牧内地すべりがある。この折りには、松代町の多くの地点で地下から食塩の濃い湧水が発生した。その成分は近くの加賀井温泉のそれと同じと報告されている。その水質は、表-1に示す通りである。まさに地震により地下の温泉水が多量に噴出して地すべりを引き起こしている。比較のために表-1に長野県の地すべり地での計測例も示している。通常の地すべり地の地下水は、温泉水に比べればイオン濃度は低いものである。陽イオン濃度が高くなれば電気伝導度も高くなるので、簡便な調査法として電気伝導度の計測が多く実施されている。
また比較しやすいように、各化学成分の濃度を当量濃度のヘキサダイヤグラムで示す。鬼無里地すべりでは、
の多い水となっている。鬼無里地すべりは、水芭蕉群生地直下に位置しており、山からの浸透水の性質を示しているとみられる。また地附山地すべりでも同様に、
の多い水となっているが、地すべり地内では周辺部に比してイオン濃度が高くなっている。
蒲原沢の土石流の水は、土石流が発生した山腹が火山噴出物で覆われていることを反映して、硫酸イオンが増加している。また、ここで計測された雪は、イオンが少ないのでこのスケ-ルでは表示できないが、雨水・雪はイオンが少ないのが通常であり、地下水に地表水が混合するとイオン濃度が低下していく。
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表-1 地下水の化学成分分析
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図-1 水質分析結果のヘキサダイヤグラム