川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第5回 土砂崩壊による天然ダムは安定か?

 地すべり・山腹崩壊による土砂が渓流・河川を堰止めると貯水池を作り始める。最近の例では、中越地震(2004)により多数の山腹崩壊が生じて天然ダムが形成され、その崩壊防止のための排水作業に忙殺されたニュ-スは記憶に新しい。この天然ダムの決壊による大きな災害は、善光寺地震(1847)の際に発生した。この際には、善光寺地震と共に岩倉山の山腹が、幅750m、長さ1300mにわたり崩壊した。 そして3,000万m3 に及ぶ崩壊土砂は犀川を堰止め、貯水は日々増大していった。地震後19日を経て天然ダムは決壊し、下流域を洪水が襲い、流出家屋は 2,200戸、死者51人を出している。
 土砂崩壊による天然ダムが安定かどうかについて判断する資料として、図-1が示されている。建設省中部地方建設局が過去の事例を調査した結果(1987)では、堰止め土量と湛水量を対比し、湛水量が大きければ決壊に至るという。また湛水量が大きいと貯水に時間を要するため、決壊迄の日数も増大している。
 1998年5月、裾花川上流の奥裾花国有林内で、面積10haに及ぶ大規模な山腹崩壊が発生し川を堰き止めたことがある。この時天然ダムの決壊について新聞社に意見を求められたが、この図が頭の中にあったので、ヘリコプタ-の上から崩壊土量と貯水量を目測で計算して、決壊の可能性が小さいという判断を述べることができた経験がある。

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