川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第6回 斜面内の間隙水圧

 斜面の安定性を説明する際、常に「間隙水圧」の語が用いられるのでこの間隙水圧とは何かをきちんと説明しておきたい。図-1 に示すごとく、貯水池を作る堤体の単純斜面により説明しよう。 
 地盤の中に鉄管を打ち込んでその管内に水が上昇してきた時、鉄管の先端部分の水頭が得られる。これが地盤のその地点・その深度の間隙水圧である。 (a)図のごとく貯水池の水面が一定に保持されている場合には、堤体の何処で計っても鉄管の中の水位は池の水面に一致する。間隙水圧の数値は測定地点の位置により異なるが、水頭の高さは一定となる。
 次に (b)図のように、池の水面が低下した場合には、堤体内に残留している水面と池の水面の高さの違いにより堤体内に浸透流が発生する。この時の堤体内の間隙水圧は、図の様に浸透流の流線網を描くことによって推定できる。
 乾燥により池の水が無くなり、地盤内の水位が (c)図のように低下した場合、堤体内は不飽和状態になる。この時堤体内の間隙水圧は、図示のように負の状態となる。
 このみっつの図の状態でどの斜面が最も安定性が高いかといえば、 (c)図では斜面内に負の間隙水圧が発生しているので安定性が高い。次に安定しているのは (a)図である。貯水池の水面を基準水面とすれば (a)図では過剰間隙水圧は存在しないので安定している。最も安定性が低いのが (b)図の状態であり、斜面内に間隙水圧が残留している分、安定性が低くなる。
 一般に、ダム湖に貯水する時、斜面の状況は (b)図から (a)図へ向かうことになる。したがって斜面の安定性は増加している。逆にダム湖から放水すると、斜面は (a)図から (b)図へ向かうことになり不安定になりがちである。水位低下が早いほど残留間隙水圧は大きくなる。これが水位急降下時の問題である。

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