川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第7回 ダム湖湛水時の椅子型斜面の崩壊

 ダムが完成して湛水を開始した時、一般の斜面では水位の上昇と共に安定性は増大する。しかし、椅子型の形状をなし軟弱層が存在する斜面では滑動することが知られている。その代表例がバイオントダム斜面の崩壊である。
 バイオントダムの最初の地すべりは、1960年に水位を130m上昇させた時に約 100万m3が滑動している。低い貯水池水位の範囲で水位を上下させて地すべりを観測したところ、変位量が減少したのでより高い水位での上下を計画した。1961年から水位を上昇させたところ地すべりの変位量が増大した。水位を降下させようとしたが、折からの降雨で水位は上昇し地すべりは加速され、1963年10月9日に大規模な地すべりが発生した。その土量は2億7000万m3といわれ、2500万m3の水が流れ出し、上流・下流で 2,125人の死者を出している。図-1 の断面図に示すように、斜面脚部の水平なすべり面上に厚さ 200mの岩塊がのっておりこれが抵抗体となっている。大崩落時の水位は700mであり、湛水によりこの部分が水没して斜面の抵抗力が減少している。このような形状の斜面を「椅子形斜面」と呼んでいる。          
 国内では湯川ダムの例がある。1978年11月2日より湛水試験を開始したところ、ダム上流1kmの道路のコンクリ-トブロック壁が約80mにわたって倒壊した。その断面図を図-2に示すように、斜面脚部に水平な礫混じり軟弱シルト層があり、道路盛土が湛水により水没してその重量が減少して抵抗力が減少し、滑動に至ったものである。

   図-1  バイオントダム地すべりの断面(山田他1971)
   図-2 湯川ダム湛水池の崩壊

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