川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第8回 垂直切り取り壁の安定性

 道路を拡幅する際には、多くの場合山側の切り取りを行いそこに土留壁を築造する工事が進められる。この土留壁の根堀り作業中に斜面が崩壊することが多い。上下水道管埋設のための溝掘り作業中の崩壊と共に、土砂崩壊による労働災害の双璧をなしている。 図-1に示すような切り取り壁の安定性は、山側の土砂の一軸圧縮強度「qu」にかかっている。理論的には、切り取り壁の高さHが「H<2 qu /γ」、ただし「γ:土の単位体積重量」ならば安定することになるが、この一軸圧縮強度「qu」がなかなか代表値を掴みがたく、また掘削後の気象条件によっても変化している。図-2はある崩壊現場で、多量の試料を採取して一軸圧縮強度「qu」を調べた例であるが、非常にばらつきの激しい結果となっている。図中に黒点で示して結果は、試験供試体にわずかに散水して試験した結果であり、現場土が降雨後に強度が低下することを示している。現場では、降雨時には強度が低下し晴天になれば強度を回復している。現場の監督さんは、土の壁に手の平を当ててみて、手の平が吸い付く感じなので安定しているとか、壁が汗をかいている感じなので注意しなければとか判断をしているという。
 この斜面の安定性を支配している土の一軸圧縮強度は、土の内部に残留している負の間隙水圧に支配されている。通常この負の間隙水圧を測定することはないが、農業関係では古くから土の乾燥の程度を知る手段として、セラミック・カップによる計測を実施している。
 現場の斜面では、この負の間隙水圧が気象条件・地下水等の現場条件により常に変動し、強度も変動していることを念頭に安定性に留意する必要がある。よい現場管理の方法は、斜面に伸縮計をつけておくことである。地すべり計測用の伸縮計が役立つことが多い。肉眼では現場の変化は発見しにくいが、計器観測は異常を教えてくれる。

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