川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第9回 地下水の流れと間隙水圧

 大雨で斜面が崩壊することから判るように、雨水が斜面内に浸透して斜面内の間隙水圧が上昇、そして斜面が崩壊することが多い。この斜面内の間隙水圧は、地下水の流れと密接に関係している。斜面内の地下水の流れとして最も理想的な流れは、図-1に示すように、不透水層の上に堆積している砂層の中を、地表に平行な地下水面を形成して、地下水が流下する場合である。この場合、地表に平行な流線とこれと直交する等ポテンシャル線よりなる流線網が形成される。図示した垂直なパイプ内の水の高さにより、パイプ先端地点の水頭すなわち間隙水圧を知ることができる。等ポテンシャル線上では、どこで測っても同じ高さ迄水が上昇する。雨が少ない時には、地下水面は低下しているが、雨が降ると地下水面が上昇し、すなわち斜面内の間隙水圧が上昇して崩壊が生じやすくなる。
 以上が斜面内の水の流れの基本であるが、実際の斜面はこれほど単純ではない。例えば図示した不透水層も不連続であったり、複数枚存在したり、パイプ状の流れであったりする。。そこで技術者は、地盤のなかの間隙水圧を計測して、この地下水の流れを想像しなければならない。当然間隙水圧の計測結果のみでは情報が不足することもあるので、ボ-リング作業中の孔内水位・簡易揚水試験・地下水検層等多くの情報を集めて、地下水の流れを想像する必要がある。

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 さてひとつの事例を示したい。図-2は1985年に大滑動をした長野市の地附山地すべり地で、その地すべり後に計測した結果である。図示した3本のボ-リング孔は、互いに 1mほど離して、深さを変えて掘削している。ボ-リング孔の先端5mは裸孔のままとし、上部は無孔管を挿入してシ-ルしている。図示のごとく、浅いボ-リング孔では浅い地下水位を、深いボ-リング孔では深い地下水位を計測している。深いてW-7では計測半ばで孔底に水がなくなり、間隙水圧が負になったことを示している。この図をみれば図-1の不透水層が3枚存在し、地下水の流れが3層であると考え得る。もっと多くの深度の異なるボ-リング孔で計測すれば、より多くの地下水の流れを示す可能性がある。図の右側に示すすべり面の深さに不透水層があると考えれば、すべり面上にはW-5で示す間隙水圧が作用しており、深いところでは地下水の間隙水圧は低下しているとみることができる。
 こうして地下水の流れを考えるには、深度の異なる複数のボ-リング孔で計測することが必要である。

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