川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第16回 水質から地下水の根源を知る その1

 地盤中の地下水がどこから由来するものかを知るためには、その水質の調査が役立つことが多い。もっとも簡単な調査では、水温、pH、電気伝導度を測定している。さらに詳細には化学成分分析を実施している。化学成分としては1NA.jpgを計測している。特殊な水質の地下水による地すべりの例としては、松代地震の際の牧内地すべりがある。この折りには、松代町の多くの地点で地下から食塩の濃い湧水が発生した。その成分は近くの加賀井温泉のそれと同じと報告されている。その水質は、表-1に示す通りである。まさに地震により地下の温泉水が多量に噴出して地すべりを引き起こしている。比較のために表-1に長野県の地すべり地での計測例も示している。通常の地すべり地の地下水は、温泉水に比べればイオン濃度は低いものである。陽イオン濃度が高くなれば電気伝導度も高くなるので、簡便な調査法として電気伝導度の計測が多く実施されている。
 また比較しやすいように、各化学成分の濃度を当量濃度のヘキサダイヤグラムで示す。鬼無里地すべりでは、2NA.jpgの多い水となっている。鬼無里地すべりは、水芭蕉群生地直下に位置しており、山からの浸透水の性質を示しているとみられる。また地附山地すべりでも同様に、2NA.jpgの多い水となっているが、地すべり地内では周辺部に比してイオン濃度が高くなっている。
 蒲原沢の土石流の水は、土石流が発生した山腹が火山噴出物で覆われていることを反映して、硫酸イオンが増加している。また、ここで計測された雪は、イオンが少ないのでこのスケ-ルでは表示できないが、雨水・雪はイオンが少ないのが通常であり、地下水に地表水が混合するとイオン濃度が低下していく。

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表-1 地下水の化学成分分析

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図-1 水質分析結果のヘキサダイヤグラム

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