川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第18回 水質から地下水の根源を知る-その3

 前報で、長野市郊外の裾花川沿いの七久保地すべりでは水質の異なる2種類の水が湧出していることを報告した。限られた紙面ではあるが、ここで具体的に地すべり地での水質の分布を示しておこう。
 図示した平面図において、図の下端を西から東へ裾花川が流れている。この川に地すべり末端部の土砂が流入して川を堰止める勢いであり、よって対策が急がれている地すべりである。地すべり土塊は幅50m,長さ400m,深さ10~15mで、途中で90度方角を変え折れ曲がった形で流下している。長さ400mの土塊は幾つかのブロックに分かれているとはいえ、滑動時には一斉に動きだす傾向にある。過去3年間の観測では、毎年3月の融雪期と夏・秋の大雨の時に活動を繰り返しており、3年間で都合7回の活動を示し、その累積移動量は約40mに達している。
 この地すべり地の地表水・孔内水等の水質ヘキサダイヤグラムを図示したが、注目してほしいのは右上方のH19-15の孔内水の水質である。深さ11mの15-1、及び深さ24mの15-2の水は、硫酸ナトリウム型の水である。同じ場所で深さ33mの15-3の水質は、塩化ナトリウム型の水である。水頭は15-3の方が5mほど低い。いずれも温泉水に分類できる高濃度のイオンを含んでいる。
 塩化ナトリウム型の水は、滑動土塊より上方の地点で採取されている。浅深いろいろな深さで得られた水であり、地表水と混合していない濃度で存在している。また裾花川沿いに約1km上流で過去に営業していた温泉宿の水質もこれと同じであり、この地域で広く得られる水質の水とみられる。
 そして硫酸ナトリウム型の水は、図示のごとく地すべり土塊の中でもみられるが、H19-15の地点で最もイオン濃度が高く、その他の地点では地表水で希釈されている。平面図には図示できないが、H19-15の地点より北東に200m離れたところには、安山岩の貫入岩体がそびえ立っている。硫酸ナトリウム型の水はこの中を通って地表近くまで上昇し、地表水と混合して地すべり地に流入していると見られる。
 この2種類の水質の水が地すべりにどうかかわっているかが問題である。一般論としては、塩化ナトリウム型の水は粘土粒子の結合力を高める働きがあり、水質的影響は少ない。硫酸ナトリウム型の水は、火山性の崩壊地に多い水である。通常の地すべり対策では降雨水が対象であるが、この七久保地すべりのように地下から湧き上ってくる2種類の水の対策はどう考えればいいのかが大きな問題である。

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図-1 七久保地すべり地の水質ヘキサダイヤグラム

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