川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第19回 溶脱作用によるクイック・クレイの形成

前報で食塩を含む温泉水が地すべり地に湧出する事例を説明したが、逆にもともと海中に堆積し、その後地下水によって粘土中のナトリュウムイオンが洗滌されて、軟弱なクイック・クレイに変化することが知られている。北欧及びカナダでは、このクイック・クレイによる地すべりも多発している。
 粘土粒子は、もともと負の電荷をもっているので、間隙水中のカチオンを吸着し、イオン及び水分子の移動しにくい固着相を形成する。陽イオンの吸着する力は、大きい方から
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の順に並んでおり、Na+ の溶脱により、鋭敏比の高い粘土が形成される。ナトリウムイオンは陽イオンの中では吸着力は一番小さいが、これが洗いだされて水素粘土が形成されると考えられている。
 北欧地域では、海中堆積粘土が氷河の後退と共に隆起して陸地化しており3,000年前から隆起が続いている。図示したノルウェ-の例では、図中に土性を示したように、自然含水比は同じでも液性限界に差が生じている。また、溶脱されていないAのボ-リング孔の粘土が鋭敏比7であるのに対し、溶脱されたB孔の粘土では、鋭敏比 500に変化している。これらの地盤にわずかな荷重がかかれば、急激に破壊が拡大することが知られている。
 日本には、こんな極端なクイック・クレイは見られないが、日本の第三紀泥岩も海中で堆積したものであり、この泥岩中で地すべりや膨張性地山の現象がみられる。こうして溶脱の影響がどの程度であるかは常に関心をもつところである。

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図-1 クイック・クレイが形成されたドラ-メン川流域の横断図
L。Bjerrum(1967)、Geotchnique、 Vol。17

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