川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第20回 クイック・クレイ地すべりの例

 前報でクイック・クレイ生成の原因について述べたので、ついでにクイック・クレイ地すべりの事例について紹介しておきたい。図-1は、1953年12月23日発生したノルウェ-のウレンザッカ-地すべりの平面図である。図の左上方から右下方に小川が流れており、図中央下部の岸辺で最初の滑動が発生した。23日朝9:30から10:00にかけて川岸の傾斜地で最初の馬蹄形の滑動が生じた。最初は、長さ・幅共に30m程度の小規模なすべりである。その後まる一日かけて後方の平坦地に地すべりは拡大した。川に沿う幅40mの出口から、すべり面の深さは平均9mで、直径約150mの地域から、土量10万㎥が流出した。
 川岸の上部では、地表から 5mが風化粘土であり、その下はクイック・クレイである。川の底では川底から3mが風化粘土であり、その下はクイック・クレイである。クイック・クレイの土性は、表-1に示す通りであるが、風化粘土の強度は地表面下1mで25t/㎡で、クイック・クレイの上面では1/㎡まで直線的に低下する。クイック・クレイの鋭敏比は50より大きく、風化粘土の鋭敏比は10以下であるという。鋭敏比が50より大きいことが簡単には理解できないことであるが、粘土の一軸圧縮強度が存在しても破壊後は粘土は液化すると想像すればよい。 
 このように超軟弱な粘土が広く分布していると、わずかなきっかけで斜面の一部が破壊すれば、後背地が水平であっても崩壊が後退して次々と拡大して行くのも理解できる。

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図-1 ノルウェ-のウレンザッカ-地すべり平面図

T.C.Kenney(1973),Geotchnique, Vol.23

表-1 クイック・クレイの土性

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