川上先生の部屋 ~地すべりのお話~

第21回 斜面の安定解析-飽和重量法と有効重量法 

 斜面の安定性は斜面内を水がどう流れるかにかかっているが、安定性を計算するに際しては間隙水圧を用いている。水の流れと間隙水圧分布とは、表裏の関係にあり基本をきちんと理解して対処する必要がある。1例として、図-1 の(a)、(b)に示す2つの斜面はどちらが安定しているかを考えてみてほしい。安定性の差をきちんと説明できる人は、安定解析の基本が判っている人である。
  (a)図は、貯水池に面した斜面で、A、B、C、3か所のピエゾメ-タ-水頭は貯水池の水位に一致している。斜面内では水の流動はなく、斜面内すべての地点で貯水池水位に相当する静水圧水頭が作用している。安定解析を行うには、貯水池水面以下の土塊に浮力を差し引いた有効重量を用いて計算すればよい。間隙水圧を考える必要はない。  
  (b)図の状態は、 (a)図の貯水池水位が徐々に低下したと考えればよい。ただし、Aのピエゾメ-タ-水頭が保持される程度に、斜面の右側から地下水が供給されるものと考えている。斜面内には図示された流線網の浸透流が発生している。安定性の計算には、流線網内の土塊重量では浮力を差し引いた有効重量を使用し、浸透力(水の単位体積重量×動水勾配)が流線方向に作用すると考えればよい。したがって、土塊は浸透流が発生している分だけ斜面下方に押される事になり、安定性は (a)図より低下している。
 以上は、わかりやすいように土塊の有効重量を使用したケ-スで説明したが、同じ斜面の安定性を土塊の飽和重量を用いて計算することができる。この時には、土塊の周辺から作用する水圧を考慮する必要がある。周辺から作用する水圧の差が、浮力と浸透力に対応する。

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図-1 貯水池斜面と浸透流のある斜面

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